2021年、私の金継ぎサイトを見たフィンランドの方からオンランで金継ぎを教えて欲しいと連絡がありました。
私は自分のことで精一杯なので誰かに教えるということは考えてもいませんでしたが、とても強く希望してくださったので、自分にできる範囲なら、と時々スカイプを通してレッスンをしていました。
そのうちの1人、Katjaさんが笹川財団のスカンジナビアと日本の文化交流の助成金がおりたので来日したいとのこと。
2022年5月末 コロナの入国規制が少し緩和された時に来日。ご縁がご縁を呼んで多方へ案内することができました。
私が一緒に訪問したのは
茨城県大子の橋本さんの漆農園と麗潤館のワークショップ、
笠間在住の百さんの金継ぎ工房、
東京都の目白漆学舎、室瀬智也さん、
私の先生、愛知県小牧市の浅井啓介先生の工房です。
Katjaさんはその他にもたくさんの金継ぎに関わる方をインスタグラムなどで見つけ、自分でアポイントをとって1人で学びに行きました。
毎日約40日間、観光にはほとんど興味を示さず。来日は二回目。
漆に携わる方はみなさんは、漆の伝統と文化をとても大切にしています。それは高級な漆器ばかりではなく、接着剤や塗料として使われてきた、身近で有用な自然の素材の一つとして。
海外からの突然のお客さん(事前にアレンジするには入国できるかどうかギリギリまでわからなかったのです)に、快く惜しげもなくその技術や活動の元となる考え方を教えてくれました。
Katjaさんの金継ぎに対する、何でも知りたいという好奇心と、技術を習得したいという強い想いは、私が金継ぎを習い始めた頃に重なりました。
Katjaさんは10代から陶芸に親しみ陶芸の先生をしていますが、「必ずしも新しい土を使って創作するのではなく、もうすでにあるものを直すことにも美しさがあると思う。だから金継ぎが好き」そんなことを言っていました。環境保護の意識の高い北欧の考えもあるのかもしれません。
私も金継ぎを始めた時は同じことを思っていました。でも今の私は陶芸に夢中で、たくさん作っては失敗作も山積み。
それでもKatjaさんに会っていると金継ぎの面白さを再確認します。壊れて不完全とされるものが、金継ぎによってドラマチックに様子を変えること。Daisoの器でも入手困難な器でも、新品でも壊れていても、その価値を決めるのは自分だということのワクワク感に。市場が決めるのではない価値に。